臼歯の破折に対する抜髄根管治療

「破折」とは、歯が「割れたり・折れたり」することです。


硬いものを噛んで割れることが多く、神経が露出している場合は特に注意が必要で、早期に適切な処置をしないといけません。


歯科ユニットと歯科用のレントゲン装置を導入したことにより、今まで大学病院で治療していただてた小型犬の臼歯の破折の治療も当院で行えるようになりました。



上顎第4前臼歯の破折





別のワンちゃん(体重3kgの小型犬)で説明していきます。



歯科用レントゲンで歯根に異常がないことを確認します。


神経の処理をしやすいように歯を削ります。


神経を抜きます。


神経の取り残しがないか随時レントゲンで確認します。


神経を抜いた部分に詰め物をします。



グラスアイオノマーセメントとレジンという硬い樹脂に特殊な光を当てて固めて蓋をします。



上手くできているか歯科用レントゲンで確認します。


磨いて完成です。






破折した歯を放置した場合は、神経から細菌が入り、顎の骨が溶けてしまいます。


また頬に感染・炎症が広がって腫上がったり膿が出て痛くてご飯が食べられないようになってしまいます。


こうなってしまうと、もう歯を抜くしかありません。



ただ、人間と同じように奥歯はご飯を噛むための歯なので、出来るだけ抜かないように早期に適切に治療しないといけません。



破折は歯の緊急状態ですので、治療の可能な動物病院に早期に来院されることが大切です。

新しい歯科器具のご紹介 

レントゲンセンサー:レントゲン撮影後、数秒でパソコンで画像を見ることができます。





動物の場合は、麻酔下での撮影となりますので、撮影から画像の確認まで全て手術室で出来るようになりました。また従来のフィルムだと現像に時間が掛かっていましたが、デジタルセンサーのおかげで現像時間がなくなり、麻酔時間の短縮になり動物たちの負担を軽減してくれています。






歯科ユニット:人の歯医者さんで、往診などで使用される持ち運びの出来る小型のタイプです。


エアータービン

研磨用のコントラアングル

洗浄用の3WAYシリンジ



今まで使用していた電気式の数倍高速回転してくれるため、歯科処置の時間の短縮に役立ってくれます。小さいですが、歯を削ったり・磨いたり・洗浄したり・唾液や排液を吸うバキュームまどいろんな機能があります。

当院で可能な歯科治療についてご紹介いたします。

実際の処置の写真を掲載しておりますので、血液などが写っていることがありますのでご注意ください。



デンタルケア 

「歯石除去」というと歯石だけを取って終わりなので、当院では歯石除去、ルートプレーニング・キュレッタージ(歯周ポケットの掃除)、ポリッシング(歯面研磨)をセットで行うため「デンタルケア」という名称を使用しています。






各種抜歯 

切歯(前歯)・犬歯(牙)・臼歯(奥歯) 多根歯である臼歯は分割後に抜歯を行います。










保存修復  

う蝕(虫歯)・破歯細胞性吸収病巣・歯の咬耗・エナメル質形成不全など歯髄(歯の神経)まで病変が及んでいない場合に、エナメル質・象牙質の損傷を修復し、それ以上の悪化を防ぎます。







歯髄覆罩術 

歯が折れたりして露髄(神経が露出している状態)していても、歯髄が健康であれば歯髄を保護(覆罩)してあげることで歯を抜かずに済みます。

また動物の場合は人間が咬まれて大怪我をしないように犬歯(牙)を短くする時もこの処置が適応になります。





根管治療 

いわゆる神経を抜いて詰め物をすることです。露髄して時間が経過すると感染などを起してしまうため、感染してしまった神経を除去し歯を保存します。





歯の形態を保ちながら機能や審美性を回復・維持させる治療を歯科保存学と言います。


何でもかんでも抜歯するのではなく「抜かなくても済む歯はできるだけ保存してあげよう」との思いで当院は歯科治療を行っております。




今回掲載した画像は当院で実際治療させていただいた患者さまのものです。


それぞれの治療内容の詳細は当院のブログ http://d.hatena.ne.jp/minami-animal-hospital/ に掲載されております。

当院の歯科治療に用いる器具などをご紹介します

歯科用レントゲン撮影装置


歯科専用で、照射角度や距離を自由に設定できます。

手術室に設置してあるため、処置中すぐにレントゲン撮影が可能になりました。


歯科用レントゲンフィルム



歯医者さんで使用されている歯を撮影するための専用レントゲンフィルムです。


超音波スケーラー(左)と高速回転マイクロモーター(右)


超音波振動で歯を傷つけずに歯石だけ砕いて除去したり、歯を削ったり切ったりします。



各種のバー


歯を削ったり切ったりする時に高速回転マイクロモーターに装着して使用します。
いろんな大きさ・形があり、歯の大きさや形などで使い分けます。



ポリッシングブラシ(右下)、プロフィカップ(左下)、ポリッシングペースト(上段)


歯を研磨する時に使用します。





エレベーター、抜歯鉗子など



これらも歯の大きさなどにより使い分けます。




各種ファイル


主に神経を抜いた後の穴を広げるために使用します、いろんな太さのものがあります。



ペーパーポイント、ガッタパーチャポイント


神経を抜いた穴を埋める時に使用します。




各種薬剤


歯科用セメントなどいろいろ。




レジンのセット



レジンとは最終的な詰め物・被せ物になるものです。

このセットは歯科医の飼い主さまに教えて頂き購入したものです。


光照射器



光照射器から出る光で、歯科用セメントやレジンは硬化します。

この機器はまた別の歯科医の先生に頂いたものです。






あつかましくも歯科医の先生方にはいろいろ教えて頂き大変感謝しております。

教えて頂いたことを動物たちにきちんと還元していくようがんばります。